クルーグマン氏、トランプ氏の関税案は米経済に「大きな影響ない」
ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏は、米大統領選の共和党候補選びでリードするトランプ前大統領が輸入品に対する10%の追加関税賦課の構想を示唆していることについて、こうした関税が米経済に与えるダメージは大きくないとの見解を示した。
貿易に関する研究でノーベル賞を受賞したクルーグマン氏はブルームバーグテレビジョンの番組で、「国際貿易の経済学で知られたくない秘密」として、高くない関税率は経済成長に大きな影響をもたらさないことだとし、「実際に大きな数字になるには、10%を大幅に超えなければならない」と語った。
返り咲きを目指すトランプ氏は、米国企業が外国勢につけ込まれていると主張し、10%の追加関税で米産業を取り囲む構想を打ち出している。また、中国の最恵国待遇の撤回などで米中経済のデカップリング(切り離し)も推進する方針だ。
クルーグマン氏によれば、10%の追加関税は米経済にとってさほど痛手にならないかもしれないが、トランプ氏の目的の一つである米国の貿易赤字解消にもつながらない見通し。
ニューヨーク市立大学の経済学教授で米紙ニューヨーク・タイムズにコラムを執筆するクルーグマン氏は「関税は、基本的に貿易を不可能にするほど高くならない限り、貿易赤字を解消しない」と説明した。
関税が大きなダメージを与えるのは地政学的な面であり、米国は世界経済のリーダーとしての役割を放棄しつつあるとのシグナルになるという。
一方、米経済については、国内総生産(GDP)が力強い伸びを示し、インフレ率も鈍化しているとして、恐らく1990年代以来最高の状態にあるとの見方を示した。
「GDP伸び率のように、高いことが望まれる分野は高く、インフレ率のように、低いことが望まれる分野は低い」と指摘。「最近の生産性の数字は実に良好だ」と語った。